先日、本を整理していて昔読んだ本を見つけました。
「書店の近代」 -書店が輝いていた時代-平凡社新書 小田光雄・著
発行は2003年5月となっています。 江戸時代から戦前の昭和まで、25店の書店の風景と共にその魅力と変遷を近代文学史を含んで近代出版業界を活写する本と書店のドラマ。
目次から内容の一部を紹介いたします。
「江戸時代の書店」 「明治維新前後の書店」 「教科書と金港堂」 「近代書店としての丸善」 「『破戒』のなかの信州の書店」 「上海の内山書店」 「新宿・紀伊国屋書店」 「京都・西川誠光堂」 など、時代と書店、出版流通の流れを単に書店史、業界史としてではなく、その時代に生きた人々の生活までも描いています。
また、「書店の小僧としての田山花袋」 「尾崎紅葉、芥川龍之介と丸善」 「梶井基次郎と京都丸善」 「丸善の店員だった佐多稲子」 など、書店と文化人との関わり、その背景を知る事で又違った視点からの文学作品に出会えるかと思います。
この本の中で取り上げている「坊っちゃんの時代」谷口ジロー・画 関川夏央・作 のコミック全5巻(現在は双葉社コミック文庫でも発売)は、私も読みましたが夏目漱石を中心とした明治の文学者たちの群像ドラマであり、近代小説の誕生と書店との関わりあいを描いています。 例えば、夏目漱石が発行されたばかりの島崎藤村の『破戒」を神保町の東京堂で買い求め、森鴎外が銀座の金港堂で平積みの坪内逍遥の「浮雲」購う(実際は二葉亭四迷)その四迷と、たまたまその場で出会う等、フィクションとは思いますが大いにありうる情景とウキウキします。
と、書店事情、出版事情、と文学者との関わりが時代と共に変わっていく様を生き生きとした文体で綴る本書は、本好き本屋さん好きに是非、手にとって欲しい一冊です。 「あとがき」で、機会があれば戦後編、海外編を書きたいと著者は言っているが、続編が出た形跡は無いのが残念です。
もうひとつは、写真が沢山入った写真文庫。
「季節のかたち」 -四季を彩る美しい日本語- 写真・文 高橋健司 知恵の森文庫(光文社)
狐の嫁入り、別れ霜、天使の梯子・・・日本人は昔から、自然現象に美しい名前を付けて季節の微妙な変化を感じ分けて来ました。 また、「夕焼けは晴れ」「羊雲は雨」などの予兆は、日々の営みに欠かせないものでした。 忘れられつつある日本独特の季節と天気にまつわる言葉を、鮮やかなカラー写真と共に紹介する見ているだけでも楽しい一冊。 その言葉の表現を自在に使えれば、もっと豊かな世界が広がるのではと思わせてくれる好著です。
「さくいん」より、いくつか綺麗な表現を拾ってみます。
沫雪、芽ばり柳、花冷え、菜種梅雨、青嵐、卯の花腐し、鰯雲、茜雲、野分、菊日和、時雨、山茶花梅雨、雁渡し、釣瓶落とし、御神渡り、牡丹雪、風花、木洩れ日・・・
いかがですか、すべてお判りの方はかなりの日本語通、情緒溢れる方かと思われます。 俳句の歳時記等でご存知の方も多いのではと思います。 意味が判って現象も写真で理解できるこの本は、私にとって「目から鱗」の一冊でした。 「百聞は一見に如かず」の諺どうり綺麗な写真を見るだけでも季節を感じられます。 ご興味がございましたらご一読を・・・
今回は、本棚からのこぼれ話でした。 ブログ仲間の「しのさん」が、YA(ヤングアダルト)中心の書籍紹介のブログを立ち上げました。 その名も「しのさんの読書日記」、拙ブログの「フレンズ」の欄からも入れますので、是非とも訪問して応援のひと言をいただきたくこの場をお借りしてお願い致します。
このところの暖かさで一気に開花したミモザ(ギンヨウアカシヤ)の一枚でお別れを。
では、又♪
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